比叡山に咲く花 ’18.3.31 晴

 比叡山では早春のこの時期にキタヤマオウレンの大群生が知られている。その光景を案内したく暖かくなった日に出向くことができた。ところが山の道端はいたるところで整備が盛んに進んでいて、花の斜面にまで手が入っており自然が損なわれてしまい、群落が台無しの状態がそこここにあったのが悔やまれたのだが、それでも何とか見ごろだとご勘弁いただこう・・。

 
キタヤマオウレン(キンポウゲ科) 
 
花はアップだが、直径2cm足らずの白花を1個ずつ咲かす 

 なお、こちらの山域では同じ仲間のセリバオウレンも見られるのだが、この種の開花時期はやや早めなために終焉となって果実化が始まっていたのは残念であった。また、こちらも同じく終焉となっていたザゼンソウも残花が見られた。

 
 ザゼンソウ


 もちろん、早春の花であるキンポウゲ科のネコノメソウ類もいろいろと開花が始まっていた。どうやらこの種は害獣の忌避植物のようだが心配は人様による盗掘だろう。
①中でも関西圏では比較的希少なイワボタンが満開となっていた。ところがこの種は咲く場所をわずかずつ移動させるのだろうか、それともそのようなことはここだけなのだろうか・・?、
  ネコノメソウ類としては年ごとに咲かす場所が少しずつ、いつもの年と場所を変えていくようで、その点では珍しい発見だと分かったのだが、その様な習性には驚かされた。
シロバナネコノメソウの開花が始まったばかりのようで、これからさらに開花が広がって華やかな花を見せることだろう。


③また、ボタンネコノメソウの開花がこちらでは相当遅れ気味のようで、咲き初めがようやく印ばかりの段階であった。
④もちろん、ネコオメソウ類の中ではいち早く開花が始まるヤマネコノメソウにはほとんど見向きもされないが、
⑤それに比べ本来のネコノメソウは小ぶりで黄金色も鮮やかな姿であちこちに賑やかに満開を見せていた。

     
 イワボタンはシベ長くその頭につく葯の黄色が特徴    シロバナネコノメソウも葯の暗紅色が目立って美しい(花粉白色)
 
ネコノメソウの苞、萼が黄緑色で黄金色に見えきれい   


 さて、植物観察の中ではセリ科と共に名うてのアブラナ科だがいろいろ咲いていた。しかし、とりわけタネツケバナ属はあまりに種が多く咲く現地での同定に至るにはその力不足が否めない。だが撮れたものだけでもどうにか調べると次のようではあった。

①オオケタネツケバナ=萼や花柄に毛がある。短角果ではなく長角果の果実に短毛がある。頂小片が大きく、側小片にも粗い鋸歯がある。上部の茎は毛が少ないが下部の茎には多い。
タチタネツケバナ=茎は細く直立し毛が多い。小葉は細かく切れ込む。長角果は無毛である。

 

     
 オオケタネツケバナ    タチタネツケバナ

 ナデシコ科ハコベ属のノミノフスマで花弁は10弁のように見えるが、基部近くまで2裂するためで本来5個である。また、花弁は萼よりわずかに長い。名の謂れは小さな細い葉は無柄で、この葉をノミの衾(夜具)にたとえたものと言われる。
 なお、よく似た名でノミノツヅリという同科ノミノツヅリ属の花もあるが、こちらとツメクサ属の二属のみは、ハコベ属と異なり花弁が2裂しないで5弁で咲くのが相違点である。これらの種は現在では相当の自然が残っていることの証明となるほどの希少種であるため、観察時においてはその旨を心得て対したい。

 カタバミ科のエイザンカタバミも叡山と名がつくくらいの花だから、後一週間もすれば大群落となることだろう。それにムラサキ科のヤマルリソウも満開近しの状況であった。

     
 ノミノフスマ  エイザンカタバミ  ヤマルリソウ

 他にはハエドクソウ科のムラサキサギゴケが咲き初めだったが、これからトキワハゼやサギゴケとともにこれらの仲間たちが勢ぞろいしての大群生が見られることとなろう。それにスミレ科はまだまだタチツボスミレばかりであったのだが、中には一株だけポツンとアカネスミレも見られた。そうそう、メランチュウム科(またはシュロソウ科)のショウジョウバカマは白花とともにあちらこちらで目にした。


 次に木本類の開花類を見よう。アブラチャンは個体数多かったが、日差しの強弱によってまだまだこれからの展開となろう。しかしながら、酷似種のダンコウバイは個体数極少なく、唯一その種の確認木も日当たり悪く芽だしそのものが始まったばかりの状態であったため、ダンコウバイとアブラチャンの相違点等観察ができず残念であった。もちろん、その同定ポイントは花柄のあるなしなのだ。

     
 イワナシ(ツツジ科)咲き初めでこれから    ニワトコ(レンプクソウ科)蕾ほころぶ
     
 アブラチャン(クスノキ科)咲き初め  クロモジ(クスノキ科)満開  カワラハンノキ(カバノキ科)雌花と雄花 終盤

 他に開花していたものにはキブシが咲き初めで方々で見られた。また、イヌツゲでなく対生のツゲが花時を迎えて満開となっていた。

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