京都西山 松尾谷林道からトロッコ保津峡 ’18.4.12 晴

 今回は保津峡の岩場に張りつくように咲く『ケイリュウタチツボスミレ』を5年ぶりに見てこようと松尾谷林道を登ってみた。思い起こせば、2013年9月16日未明の台風18号は日本の観光名所で知られる嵐山一帯でも大洪水被害を受け、当時TV放映が全国に流されたことから大変な話題となったのだ。
 もちろん、その上流の保津川も大洪水で昔からの旧船曳路も登山道が流れに呑まれてしまい、その後1回のみ歩いただけで廃道化となっているこの道にご無沙汰なのだ。そのケイリュウタチツボスミレは船曳路で過去何度も目にしてきたのだが、その後の様子を知りたくて出かけたものである。

 さて、そのスミレはことのほか美しい薄紫色の花をつけるケイリュウタチツボスミレだったが、保津川下りで有名な保津川流域の岩石がごろごろ積み重なる川原や岩上のわずかな砂や土の中で咲いており、通常の水面から2~3mの高さまでの岩や川原の砂の境目や岩の割れ目を中心に生育していた。
 そこは増水すると冠水するような低さで、高くなって水流のかぶらない地には住まないようだ。近年になって認識されたタチツボスミレの渓流型変種と説明もある。なお、この川原沿いに同じような環境で住みつく花たちには自生のユキヤナギ、カワラハンノキ、ネコヤナギやクサボケ、マンリョウにクサノオウ、ハタザオくらいしか分布していなかったのだが、昨今の植物層の変遷状態を知りたいところだが廃道化が進んでいることだろうから、当時のコースどうりの完歩はもう夢の世界だろう。

   
 ケイリュウタチツボスミレとタチツボスミレとの
 区別点

①増水すると冠水するような河川中流域の岩石
の隙間や川原に生育

②花弁が細い傾向にある

③根生葉の基部がタチツボスミレのような深い
心形にならないで切り型に近い

④花弁の紫色は薄く葉に光沢がある

⑤花の後の茎葉は長三角形や、基部がくさび形
の菱形に近い型になる

以上「日本のスミレ」(いがりまさし著)参照に見た目での感想を
含む
   
         
     
   
   



 撮影中にも保津川下りを楽しむ観光客(ほとん
ど外国人)が船の中から大きな声がかかって
楽しそうだ。
 にこやかに手を振りあって挨拶を返そう~♪♪
その内、何船ものことから背を向けて花撮影遊
びに没頭するのであった。 
   

 しかし、保津川までの松尾谷林道で見たスミレだが、個体数、種別とともにほとんど咲いていなかったのが惜しまれた。

         
 タチツボスミレ ニオイタチツボスミレ   アカフタチツボスミレ シハイスイレ  ヒメスミレ 

 長い林道には昨秋の台風被害も甚大だったようだが、その倒木整理もようやく片付き、作業車も終点のロータリー地までOkのようだ。とりわけアブラナ科のタネツケバナ属の種がいろいろと咲いて楽しませてくれた。その種の同定にはなかなか手ごわく自信はない。それでもオオバタネツケバナのグループを取り上げてみよう。 

         
オオケタネツケバナ  茎、実とも有毛、根生葉は頂小葉と側小葉の大きさが顕著にちがわない   ニシノオオタネツケバナ 茎、実とも無毛 、側小葉にもまばらな鋸歯あり、托葉はない
         
 オオバタネツケバナ タネツケバナに似るが、側小葉が全縁なのが特徴   タチタネツケバナ 小葉細かく切れ込み、葉の基部に托葉状の付属体がつくのも特徴

 その他の山野草たちも見慣れたものばかりだがご覧いただこう。

     
 ツルカノコソウ 走出枝あり  ヤマアイ 古来より染料として用いられた ネコノメソウ 仲間の本家 
     
 ムロウマムシグサ 仏炎苞先糸状に尖る  ヒメウズ オダマキの仲間  ミヤマハコベ 茎に2列の毛あり

 次に木本類のアケビ科アケビ属とムベ属だがいずれも雌雄同株であり、これらの花は雄花、雌花が咲き揃ってはいない時期だった。でも葉を見れば容易だろう。もちろん開花時期には花でも楽しいが、アケビ科の花は普通の種と異なり、小さい方が雄花で大きく派手な方が雌花と覚えれば大丈夫だろう。今回はいずれもバラバラな開花状況であった。

     
①アケビの葉は5個で全縁   アケビの雌花、奥の雄花共に蕾 ②ミツバアケビの葉3個で鋸歯有、花無 
     
③ゴヨウアケビの葉は5個で鋸歯有   ゴヨウアケビの雌花 雄花は蕾  ④ムベの葉は5~7個で花はまだ蕾

 バラ科のキイチゴ属も見かけた種類は少なかった。

   
ナガバモミジイチゴは花がつく枝の葉は*切れ込まない。その他の枝は三裂す、枝は無毛でまっすぐな棘がつく 
 
ニガイチゴは仲間の中で一番美味しい 笑  クサイチゴの果実うまいが草丈低く手が出ない 


*キイチゴ属で葉が切れ込まない種は他にもあるためそれぞれの区分点を知る必要がある。
 特にこの種の切れ込まない葉とビロードイチゴの葉の見分けは注意が必要だろう。 

 ようやくにして稜線に上った。そこにはあたかも森の王様のようにどっしりと大きな枝ぶりで身構えていた樹木が待ち受けていた。広がった枝には葉の展開が始まったばかりのようで、この瑞々しい葉を手にとって見るとウワミズザクラの葉のようだが、それならこの頃であれば試験管ブラシのような白い花が咲いているハズだと全体を見渡すも花は0だ。
 あれ~、ではこの木は何だ~・・?、となってしまい、帰ってから調べようと暢気なものだった。ウワミズザクラも古木となれば年によっては花を咲かせないこともあるのだろうか・・?、普通シャクナゲやシロヤシオなどでも裏年といっても、少しは咲かせるのを見ているのだが全く0とはひどいのではないか・・。
 帰宅後チョンボありが判明だった。バラ科サクラ属であれば必ず密腺があるはずだったが、その部分の確認忘れであったのだ。ちなみにこの種の密腺は葉柄でなく葉身の基部にあるハズだった。下手な写真でそれすらハッキリ写っていない・・泣笑い

     
 葉表 細かな鋸歯有    葉裏 無毛、葉柄2cmくらい
     
見た目には高さ15mくらいはありそう    本日最後の方で見たウワミズザクラの花 

追記 '18.4.16 ウワミズザクラの密腺について後日歩いて見たものの葉裏を撮りましたのでご覧ください。葉身基部についています。10倍ルーペで拡大した画像です。

 
密腺は葉身基部についています 

 最後はその他の木本類である。

     
 イズセンリョウ コクサギ  ウリハダカエデ 
     
 サルトリイバラ  クロモジ カスミザクラ 

 ホームヘ

180416.htmlへのリンク

180420.htmlへのリンク

180422.htmlへのリンク

180426.htmlへのリンク

inserted by FC2 system