比良のコヤマノ岳 '18.5.26 曇

 イン谷口-青ガレ-金糞峠-南尾根上林新道-コヤマノ岳-武奈分岐-イブルキノコバ-八雲が原-ダケ道-イン谷口

 今回は正面谷から取りつき南尾根からコヤマノ岳より武奈ケ岳を登る予定の案内でしたが、ご参加の方の調子が思わしくなくコヤマノ岳までで、武奈ケ岳断念の夏山アルトレ案内となりました。ただ、今回ほどいろいろな面白話?のある山歩きが久しぶりに展開されたのでした。

 のっけからまず第一話です。イン谷口でバス下車でストレッチしましょう。と出合橋手前のフラット地でお客様に身体をほぐしてもらいます。とストレッチをしかけると、我らと同じくバス下車後の若い男女3人連れがスマホを見ながら四差路をうろうろしています。するとバスが走って来た方向へ「取あえずバックしよう・・」と自信なげに男性がリードしかけます。それを目の前で見ていたこちらが、「エ~、どこ登るつもりなの・・?」と声かけると「堂満岳なんですが、こちらへ行けばいいのですね・・」、わ~、出だしからスマホの地図が読めないんだ・・と分かったので、そこは堂満への登山口をやさしく話しましょう。「桜のコバ方向へはこの出合橋を渡り、最初の分岐右折が堂満岳への道ですよ」と教えます。
 思うに、20代後半くらいの3人だったようですが、いくら堂満岳が初めてだろうとも、登山口をスマホ地図で分からないのではこの後の道が思いやられることだろうと、他人事ながら心配であったのでした。この若人達の行動にはどのように考えればよいのでしょうか。

 とあきれ顔でストレッチを続けようとすれば、今度はすぐに二人連れのマイカーが我らが準備体操をしている方を見て出合橋を渡りたいように止まってしまいました。その時にはイン谷側にはまだバスが停車していますのでイン谷側へはマイカーは進めない状態です。どちらに行けばよいのだろうと思っていたように見えました。で、「出合橋は車は渡れませんヨ・・」というと「駐車場はどちらでしょうか・・?」との声に対し、イン谷側へはバス停車中のために「ここを真っすぐに上がればありますよ」と正面谷の駐車場を言うとすぐに直進でした。

 我らはこれでストレッチも終えて正面谷へ進行でしたが、バス停付近にはまだどうやら団体さんらしく大勢の登山者がバス下車すぐあたりでストレッチをするでもなく、ウロウロとしています。バスもまだそのまま止まった状態でした。それを横目にこちらは正面谷方向に歩きますと、すぐにレスキュー比良正面谷管理事務所の小屋で、用意の登山届を投函して歩きだしますが、登山者は誰も来ないのです。おそらく彼らはイン谷方面の大津ワンゲルからや、リフト道からの釈迦岳か、あるいは神璽谷のどちらかへ行くのでしょう・・。

 続いて第二話です。そしてこちらは順調にトイレ地から大山口へ向けて歩くと、夫婦らしき二人連れが横道に入って道から離れて休んでいるのを横目に追い越します。すぐに大山口ではお客様に「下山はあちらから降りてくるのですよ」と話します。そして衣服調整で立ち止りました。
 すると先ほど休憩されていた二人が追いついてこられ、「この分岐をどちらへ行けばいいんでしょうか」と聞きます。すぐにこの二人は先ほどのマイカーで駐車場を聞いた方だと分かり、「どちらの山に登るんですか」と聞けば「釈迦岳です・・」「エ~釈迦・・、もちろんここを直進し金糞峠からでも行けますし、右から上って北比良峠よりでも釈迦には行けますよ、でもエライ遠回りですよ、比良は初めてですか・・?」と聞けば後の話はびっくりポンでありました。

 「釈迦岳初めてです」とのことで「地図を持ってますか」出てきた地図は買ったばかりの昭文社の真っさらで初めて広げる感じでした。「今はここ大山口ですよ、戻ってイン谷口を左折して登って行けば釈迦岳への道ですよ」といっても後の祭りでした。結局お気の毒でしたがイン谷口へと戻られたことでしょう。

 そのお二人にいろいろ聞けば山はもちろん初心者のようで、思えばあまりにも安易に釈迦岳へとの考えは極めて危険行為であり、「最近も大阪方面の夫婦ふたりが遭難死されてたのを、滋賀の方なら新聞でも見なかったですか、比良山系の山歩きでは遭難は多いですよ。比良を甘く見ると大変なことになりますよ、もっと低い山歩きで慣れてから向かわれるべきではないでしょうか・・」と注意させてもらったのでした。

 その第三話です。最初のルンゼ取りつき手前あたりで、女性一人の上からの声が登っている我らに向けて聞こえました。「青ガレへはこの道で間違いないでしょうか、連れが先に行ってしまい、はぐれてしまって道が分からなくなってしまいましたので・・」とのことです。「一緒って大勢のグループですか」「いえ、二人連れです」「エ~先の方が見えないほど離れてしまうなんて考えられないし、そんな歩き方したらだめでしょう。おたく青ガレ方面へは初めてですか」「いえ、なんども歩いてますがこれまではただついて行くだけでしたから道を覚えてないんです」「そうですか、ま、道は間違いないですから注意しながら進めばどこかで待っておられるでしょう・・、それで金糞峠からどの山ですか」「ミクモ方面です・・・」「ミクモ・・?、それってヤクモではないですか、八雲が原です。もう一人の方と離れないように歩きその後も注意してくださいね」との会話でまたまたあきれてしまいました。

 さすがにその女性の話のように何度も歩いておられるようで、足は大丈夫とみえ、その方の姿はすぐに消えたのですが、しばらくで青ガレ取りつき堰堤前へ着けば、右前方にその夫婦らしきふたりが青ガレ登り始めあたりを進む姿が目に入りました。これでお二人は大丈夫だな・・と安堵したのでしたが、やはりパーティーでの登山時のリーダーへの戒め話しでありました。

 こちらのお客様も青ガレなど初めての方でした。その方にとっては本日第一の難所であり、ショートロープで確保しながら登っていただき、青ガレが無時の通過となりました。その後の水場がすめば道はやや歩きやすくなってきます。でも慣れない方には注意は当然必要でありまして上からの下山者との交差も次第に多くなってきます。

 そんな時にまたご夫婦が今度は降りて来られました。このご主人は元気者らしくとんとんと下山されており、50m近くも遅れてたでしょうか、奥さんらしき方は空身でストック1本で不安そうな歩きでヨロヨロ遅れています。こちらから「早い時間ですね、急がなくても注意してゆっくり降りてくださいね。ところでどこへ登ってきたのですか」と声をかけると「どう・・」と山の名もはっきり覚えておられないような感じで「堂満ですか、大変でしたね・・大分早く出発されたんでしょう、暗いうちからですか・・?」と聞いていると、下の方からご主人の声がし「4:40から登り始めました、金糞峠より大橋から南比良峠、そして堂満に登って、正面谷のピストンです」との説明が下からされます。「うゎ~、すごいルートですね、エライ道を奥さんもよく頑張られましたね、この後も気をつけて降りてくださいね・・」と声して別れたのでした。
 この話しを聞いて、健脚なご主人とやや心配な奥さん二人連れのカップルを見て、今日はじめて救われた気持ちにようやくなれたのでした。やはり山は体力はもちろんですが、技術力も必要であるべきだと知っていただきたいなと思いながら、こちらの我らのその後の進行もと考えながら歩くのでした。

 金糞峠にどうにかして到着で長めの休憩としましょう。さて、頭の上にはサラサドウダンがまだ咲き残り、苔むす中にはチゴユリは咲き終わって姿を消し、バイカオウレンの果実が面白い姿を見せて立っています。ここまでにもハナニガナ、コナスビ、ジシバリの黄色花が咲き、咲き初めのウツギや峠を越しかけているタニウツギも咲いています。数ある堰堤あたりにはオククルマムグラでなくクルマムグラが満開となっています。花はとっくに終わっているミヤマカタバミの大きくなった葉っぱがいたるところで見られました。でも、今日ばかりは花巡りは横において、歩くことが目的なんです。

 お客様には峠の爽やかな風を受けて元気を回復していただきました。金糞峠下のテン場横の小橋を渡ればすぐで上林新道取りつきです。ここを小さな稜線目がけて登ればシャクナゲの森でした。きっと4月末あたりには大群生で見事であったことでしょう。そのシャクナゲの中の道を登ってもらいます。そして四辻から南尾根のコヤマノ岳最短道を登り上げます。初めてのお客様にはやはり急登が堪えるようで、ゆっくりゆっくりの歩きでどうしても時間はやむをえません。それでも太目のブナが出てくるあたりでは、相当辛いようでしたがどうにか中峠分岐まで登っていただけばもうコヤマノ岳です。そのコヤマノ岳の表示立つあたりにはブナの王様が緑一色の中に座っています。このあたりまでくればやれやれでした。

 すぐ先の最高点のブナ立つ地で、琵琶湖や釈迦を眺めて、遅めの昼食をゆったりと取っていただきながら、今回は残念ながら武奈ヶ岳登頂は難しそうですが、それは次回のアルトレ時としましょうということとなったのでした。それにしても初めてのコヤマノ岳の爽やかな風に出逢っていただき、比良山系の地形図上で標高の表記ある1000峰が15座ある中の、NO2である1181mのコヤマノ岳の頂での憩いをお楽しみいただけました。

 食後にはパロラマラインをやめて、せっかくですからもうすこし先まであえて進んでいだき、武奈ケ岳を見上げていただきましょうと前進します。コヤマノ岳コルより山頂を見上げてもらって冬道をイブルキのコバへ、豊かなブナの森を歩いてもらい、そして八雲が原へ降りましょう。その間には若人のテン泊デカザック組に大勢の姿を見て八雲の石のベンチでコーヒータイムでした。

 その後は足を考え、登りの楽な旧比良ロッジ跡経由で北比良峠へ上がり、その後はお決まりのダケ道の下山となりました。それにしても長時間歩きとなってしまいましたが、アクシデントもなく無事にアルトレ一回目が終えられたことは何よりでした。お疲れ様でした。今後も近場でトレーニングを欠かさず北アへ備えてくださいね・・。

 本日の花もいろいろ見られたのですが、写真とはなりませんでした。以下より他にはレンゲツツジ、ヤマツツジ、ベニドウダン、テイカカズラはやや終盤となっており、咲き初めの花はウツギやナナカマドが見事に満開となっていました。もちろん、八雲が原にはテントの花がいく張りも広がっていました。
 また、北比良峠にも琵琶湖の見える東側に二張りあり、そばには若者がじっと琵琶湖を眺める姿を見ると、あのように山の高きところより琵琶湖を独りで眺めているのも、なかなか乙なものだなという感じでした。。。

         
 ジシバリ(キク科ニガナ属)   バイカオウレン(キンポウゲ科オウレン属)     サラサドウダン(ツツジ科ドウダンツツジ属)

 景色等です。

             
コヤマノ岳のブナの王様     山頂付近のカマツカはほとんど蕾ばかり    コヤマノ岳最高点地から釈迦岳や湖    コヤマノ岳鞍部から武奈ケ岳を見上げ

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