カキランとハナハマセンブリ ’18.6.25 晴
今回のカキラン巡りはほとんどの花が終焉となっていました。どうやら4~5日遅れの様相を呈して訪れる日程が失敗でした。でも、せっかくですからそれなりの残花を並べてみましょう。それにしてもこの種の今年の花期は一週間もなさそうでした。もっともその原因は強烈な温暖化も大きな原因ではないでしょうか。
カキラン(ラン科カキラン属) |
それは静かな山里の湿原に咲く柿色の花、カキランの群れ咲く姿のそばに佇めば、震えるほどの感動をいただけるよう思えるのでした。いつまでもこのような光景を眺めたいものです。ありがとう・・・来季もまたの出合いを頼みましょう~。
さて、猛暑日に近いこの日の暑さのなかで、空からはジリジリと照りつける日差しに負けないで、淡紅紫色の艶やかさでなんと可愛い花が待ってくれました。そうです、この頃の暑さには緑の中に白花ばかりが多いのですが、突然目の前に現れてびっくり仰天の素晴らしい色あいのハナハマセンブリでしょう。
ハナハマセンブリ(リンドウ科シマセンブリ属) |
やや痛んではいるのだが茎基部の葉も十字対生、日差し強すぎ上手く撮れない 泣
可愛い花なのですが、残念ながら地中海沿岸の原産で、帰化植物なんですね。日本では1988年神奈川県で最初に発見されたといわれることから、まだ30年くらいしかたたない日の浅い種のようです。個体数は多くないようで、普段頻繁に目にすることはなさそうなことから、主たる特徴を羅列してみましょう。
・一年生又は二年生の草本で、全体が無毛である。茎は4稜であり、中空で高さ20cmほどになっているが、なよなよとしているように見える。
・葉は先の尖った倒卵形で全縁で十字対生となり、根生葉はロゼットを形成しない。無柄で対生する。
・花は直径8mmほどの紅紫色の5裂した花を多数つける。5枚の花弁は花筒のほぼ1/2の長さといわれる。
・類似の帰化植物で『ベニバナセンブリ』があるが、こちらは花弁が花筒のほぼ1/3の長さであり、根生葉は花時にもロゼットを形成する。花は直径が11〜13mmと大きく、開花は前者よりやや早いといわれる。
外来種とえば、こちらでは北アメリカ原産のキバナノマツバニンジンも咲きます。ブタナなどとともに雑草扱いで、地元の方達の草刈りの対象種とは残念なことです。
キバナノマツバニンジン(アマ科属) |
でもこちらはバリバリの日本の山野草です。葉の表面に粘液を出す腺毛がある食虫植物のモウセンゴケです。この花も仲間はいろいろありますが、特徴は根生葉の長い2~8cmの柄が目につけばモウセンボケに間違いないでしょう。しかしながら花の大きさは直径8mmほどと小さな白花です。こちらでは花は終わったイシモチソウ、コモウセンゴケの変種であるトウカイモウセンゴケがあります。さらに食虫植物といえば、この山域ではタヌキモ科の仲間たちも何種か、これからさらに暑くなるころには咲くことでしょう。
モウセンゴケ(モウセンゴケ科属) | 同左の葉と柄 |
亜高山帯でも大群生地で咲くことで知られるキンコウカが、咲き初めとなってきていました。来月の百名山である北アの常念岳でも、この多くのキンコウカをお客様にも見ていただけるのだ!、と大きな期待感が、次第に夏山の近づいてきたアルプスを思いながらここで眺めるのでした。しかし、ササユリにコバノトンボソウは終焉となっていました。
キンコウカ(キンコウカ科属) | ササユリ(ユリ科属) | コバノトンボソウ(ラン科ツレサギソウ属) |
さて、木本類はいろいろの種が分布するのですが、次の花が咲きかけているようでした。
イソノキ(クロウメモドキ科イソノキ属)*1 | シャシャンボ(ツツジ科スノキ属)*2 |
*1 イソノキの花はつぼみからほとんど開かない花らしくない花でしょう。それより珍しい特徴は、枝に葉が2枚ずつ互生になるコクサギ型葉序であります。気になる方は今度出会った時に枝を手に取って観察してみてください。
*2 シャシャンボの花はまだつぼみです。ふつう花期が6月下から7月とあるように花の遅い種です。でも晩秋になると黒紫色に熟す果実は「サシブ」と呼ばれて美味しいことで有名です。直径5~6mm程度で甘酸っぱく、生食できます。日本のブルーベリーと呼ばれるくらいですからツツジ科の中にあって1~2位くらい美味しいです。
また、おもしろい特徴も持っています。葉裏主脈に5~6個の極小さな突起があり、葉先から基部へ向かって人差し指の腹でさすってみるとその突起が分かります。フィールドでは、この突起を確認することで花も実もなくても同定完了です、ぜひお試しあれ!。
さて、最後はブドウ科です。これは展開したての葉が地を這ってたので撮ってみました。葉の特徴はサンカクヅルに似ていますが、アマヅルの葉はそれより寸づまりに見え、両面とも光沢があります。そしてこの画像のように新しく展開したての葉裏は茶褐色気味な感じでしょうか。
もちろん、葉の鋸歯間がこんもり山形となっています。わたしはこの覚え方をアマヅルのアと山形のヤをとって『アヤ』とフィールドで珍重しています。笑
アマヅル(ブドウ科属)の葉表 | 展開すぐの葉裏は茶色っぽくなりやすい |