京都北山 愛宕山 ’18.8.20 晴のち曇

 保津峡-ツツジ尾根-愛宕山-樒ケ原分岐-神明峠-水尾-保津峡

 今日はそれなりの涼しさとなっていたので快適な山歩きができそうだ。ならば今年のミヤマウズラはどうだろうかと愛宕へ向かったのだが、結果的には2016年の大群落とはうらはらに、昨年と同じで裏年のようだったのは残念だった。でも、その代わりにミヤマカタバミの珍しい閉鎖花が見られたので辛抱しよう。

 まずはその『閉鎖花』についてふれてみよう。

 多くの植物たちが花開く(開放花)だけでなく、花は開かないで閉鎖花をつけて、エネルギーをできるだけ使わずして、より自身と同じ遺伝子も残す戦術を取って種の命を末永く残すこととしている植物があるらしい。わたし的にはその種はセンボンヤリ、キッコウハグマとともにミヤマカタバミたちの閉鎖花にしばしば出会っている。もちろん、他にもいろいろの閉鎖花があるようだ。それらはスミレ・ツリフネソウ・ホトケノザ・フタリシズカ・ヒメハギ・ヤブマメ・ミゾソバなどである。

 
 ミヤマカタバミの閉鎖花

 今日は涼しいなと思いながら愛宕神社の社務所前広場まで上がって、いつものように休憩小屋の温度計を覗いてみれば、さすがに涼しいハズだ。24℃を指しているではないか。これなら下界より10℃差近い快適温度ではなかろうか。とホッとしてあたりを見渡せば、目の前には今年初のトリカブトの花であるキタヤマブシがもう満開を過ぎているようだった。それに傍らには神聖なる樹として知られるタチバナの果実も膨らんで見せてくれたのだ。

     
 満開のキタヤマブシ    タチバナの若い果実*

 *タチバナ(ミカン科ミカン属)の花は5~6月に枝先の葉腋に3cmほどの白い花を咲かす。そして果実は秋から冬に黄色に熟すして直径3cmくらいで小さく、果皮はみかんのように黄色で薄いが、果肉は酸っぱく食用にならないようだ。

 そしてその後に見た樹木は真っ赤な実を鈴なりにつけ、また見た目にもいつも見るゴマギとは確実に幅広で長く見えるヒロハゴマギのような葉が目に入った。↓画像のようにほんとうに一杯の実の重さで枝も垂れ下がっているようだった。よくよく見ると近くにはその親木だろう。相当の古木がこれまたすごい果実をつけて枝が折れるのでは・・と思えるほどの豊作となっていた。

 
ゴマギ(レンプクソウ科ガマズミ属)*   

 *ヒロハゴマギは本来、東北地方と本州日本海側に分布するゴマギの変種である。積雪の多い日本海型気候に支配される地域でもあったであろうこの地域ではゴマギとの交雑によってできた種かも知れず、普通のゴマギよりずっと葉の幅が大きく見え、葉身の長さもずっと長い感じがする葉の木であるのだが・・?、おそらくヒロハゴマギではなかろうか・・?。次回はこの木の葉の長さおよび幅を計ることとしたい。

 その後、静かな愛宕三角点地で昼食をしながらのんびりとしていたが、残念ながら比良や比叡方面は雲が広がってきだしてきてしまった。↓の写真は着いてすぐの写真。半時間ほどで腰を上げ、下山は久方の神明峠へ降りよう。

 
 愛宕三角点地(890.5m)

 三角点からはジープ道を辿って進み、目の下へ牛松山を見下ろす。以前には大雪深く3人連れのラッセル疲れで上まで達することが出来なかった苦い思い出もある山だ。あの山頂へもしばらくご無沙汰だな。コース取りも長短いろいろ組める便利な山である。そうだ、牛松山といえばやっぱり干支の山だから、次の丑年は2021年のようだ。するとオリンピックの翌年とこれはすぐだナ・・、ならばそれまでおいておこう。

 
亀岡市の可愛い牛松山だ

 樒ケ原分岐でジープ道から別れ、神明峠への途中には鉄塔が続いている。この鉄塔下で一本立てよう。南方向には低山ばかりの親しみある連なりの山並みが並んでいる。左の尖った山は近年新しい山名がついた『山上ケ峰』だ。南のその右に平なように見える小塩山とポンポン山が続いて鉄塔、アンテナ群も見える。遠く右側へは能勢方面の山が広がっている。ほとんどの頂を踏んでいるため殊の外愛着ある山ばかりだ。

 
山上ケ峰に小塩山からポンポン山 

 そして、三角点地から小一時間で神明峠へ降りて来た。この峠もほとんど人の姿などない静かな峠である。東西南北といろいろな方向へ踏み入れている思い出の峠である。本来であれば峠より、車道は歩かずに水尾尾根から明智越を横切り、そして高瀬山よりさらに南下して保津峡駅へ向えばよいのだが、高瀬山を過ぎてさらに南下し、東折れあたりからの後半が相当の荒れ様で、昨今では亀岡ハイキング道が通行禁止になってからは人入らずで廃道化が進んでいる。そのためやむなく車道をとり、岩ケ谷口から水場で汗を拭き、これまた人影など出会ったことほとんどなくなってきた水尾集落を通り、JR保津峡駅へと帰ってきたのだ。
 そうだ、水尾から旧道を降りれば明智越入口を右に見て通過するのだが、先の大雨、台風被害の土砂崩れにより明智越は通行止めの大きな標示が下がっていたので、亀岡への明智越歩きは注意が必要のようだった。

 タマサンゴの花(ナス科)

 でも、この途中では南米原産の帰化植物であるタマサンゴの白い花に出会えたのだ。この花を見てすぐに思い出したのだが、それはサンシチソウという黄色い花だった。さすがにタマサンゴの白い花は初見であったが、暑い真夏に咲く花のためにその時期にはこんな低山地には用はなかったのだ。
 だが、秋の涼風のころのハイクにサンシチソウの花を見たのは忘れられない。なぜなら、明智越コースは戦国時代の将軍光秀が越えたであろう峠道なのだが、将軍にちなんで薬草として知られたのがサンシチソウであったものが野生化したのだ。だが、タマサンゴと同様にこれまた帰化植物(中国原産)なのだ。
 ところが、周辺では近年コンクリート林道の開発となってしまい、その種はもう絶滅してしまったのだろうか。今日もまだ残ってくれていないだろうかと車道左右をずっと凝視しながら歩いたのだが、その姿は全く目に入らなかったのが悔しい。

     
 神明峠    タマサンゴ(ナス科)*

 *タマサンゴは花も実も約1cmほどで、特に赤いつるっとした実は秋から初冬にかけてよく目立つ果実だ。この種はあちこちで植えられているのを知っていたのだが、これほど多く野生化していたのもビックリであった。これまでは果実と葉しか知らなかったとはいえ、「おっ、この花はタマサンゴだ!」とこの花を見てナス科のようだからと、花の大きさから判断し名はすぐに分かった。

 それより、このタマサンゴの帰化植物の点から、やっぱり黄色花のサンシチソウが思い出され、今では姿ないその種が気になる花から、さらにその頃の明智越一帯のハイクでよくご一緒した山友の方たちの顔を思い出すこととかができたのだった。さぞ、お馴染みの皆さんもお元気なことだろう・・。

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