比叡山に咲く花 ’18.10.2 晴のち曇

 なぜか9月は一度も比叡山へ行けなかった。そんなこんなでおよそ二ケ月ぶりである。10月の比叡山ともなれば、やっぱりミカエリソウの大群生だろう。もっとも花はやや遅きに失したが、それでも充分に楽しむことができた。

         
    ミカエリソウ(シソ科テンニンソウ属)     

 次にはオタカラコウも方々に咲き誇っていたが、こちらもやや遅めであり、まさに残花の様相であったが、頭花が大ぶりであり背も1mほどには十分なるなど華やかな姿が見られ、似たような仲間が多いことから好きな花である。メタカラコウとそっくりな花を咲かせるのだ。今日も出会った方から「この両者の違いはどこなんでしょうか・・?」との質問が出たのだが、ちょっと花好きなくらいではほとんどその相違点は分からないらしい・・?。もっとも植物の相違点などにほとんどの山歩きの方は気にもかけないし、もちろん覚えようともしないのが本音ではなかろうか。

 図鑑にもあるように、メタカラコウの舌状花が1~3個で、オタカラコウの舌状花は5~9個との表記が昔からあったのだが、近年では後者の舌状花は5個以上との表記となっているらしい。こちらの山域でのオタカラコウの舌状花は多い個体には14個もついた花も見られた。要は「舌状花の多いのがオタカラコウ・・」とくらい知っておれば分類はいとやさしだが・・。笑

         
    オタカラコウ(キク科メタカラコウ属)     

 ノササゲの果実が早くも見られた。話は飛ぶが、マメ科の仲間はいろいろな果実を見せる。そして山中でアマチュアカメラマンに秋ごろに出会えば、その方々で植物を狙われる一番人気は、このノササゲの花でなく、独特な色あいの果実色と聞いたことがあるのだ。いわれてみれば確かに、ぶら下がっているその色あいが特別に輝いているようにわたしでも思えた・・。

     
ノササゲの光沢ある濃紫色の実    左の葉、マメ科の三小葉は姿いろいろ違いあり 
     
アケボノソウ(リンドウ科センブリ属)    普通5裂だが、4裂もしばしば見る・・* 

 * アケボノソウは普通花弁は5裂なのだが、4裂で咲いているものも山中でしばしば目にする。そして本家のセンブリももちろん花弁は普通5裂であるのだ。そのアケボノソウと同じようにセンブリ、イヌセンブリ、ムラサキセンブリともに、いずれも4裂の花弁を見ているわたしである。

 他の山野草にもこんな種が見られた。

       
サンインヒキオコシ(シソ科ヤマハッカ属)   ツリフネソウ(ツリフネソウ科・属)  オハラメアザミ(キク科アザミ属) イケマ(キョウチクトウ科イケマ属)の果実 

* イケマは秋にはガガイモの果実のような、はたまた、紡錘形をしたオクラのようなひょうきんな果実をぶらさげて見せてくれる。ところがイケマは毒草であることも知っておきたい。そして生薬として昔は利用されていたらしい。薬草として、利尿、強壮、強心薬、食中毒の解毒や腹痛、歯痛、風邪薬、回虫の駆除などに使われたとのことである。


 さて本日の最後は木本類だ。今日はつややかなオトコヨウゾメの赤い実が多数見られた。この種はコバノガマズミと特に葉が酷似し、とりわけ秋の実時や葉だけでの同定はそうた易くはなさそうだ。でも春の花時はオトコヨウゾメの花は雄しべが花冠より短く、後者は長くて突き出るために比較的簡単に見分けられるだろう。

         
    オトコヨウゾメ(レンプクソウ科ガマズミ属)     

 ところが、この時期の赤い果実時には「この果実は何ですか・・?」ということになろう。果実の相違点をしいて言えば、オトコヨウゾメの実は楕円形で、コバノガマズミの実は卵球形であると図鑑にもある。しかし、この違い方法を覚えたとしてもその断定は容易ではなかろう。たとえば、↑画像三枚の赤い果実は楕円形でしょうか、それとも球形でしょうか・・?。という具合にフィールドで自信を持って言えるようになるまでは大変ではなかろうか。

 そんなことから、葉で見分けるにはと考えてみよう。でも葉での区分はさらに難解であろう。まずは葉柄付近の毛の有無も見るのだがこれは難しい。では確実な同定方法だが、それは葉柄基部に針状の托葉があるなしで、なければオトコヨウゾメ、針状の突起物があればコバノガマズミである。最もこの手法は花の咲くころが一番分かりやすいだろう。それは秋にはその托葉が落ちている場合が多くなるからだ。
 しからば、葉での最終同定方法だが、オトコヨウゾメの葉を押し葉(↓画像左)にし、乾燥すればその葉表は黒くなってくる。その他のガマズミ類は黒くはならず、緑色の葉のままである。この押し葉の方法がオトコヨウゾメか、はたまたコバノガマズミかを知るには、やや時間が必要だろうが間違いなく同定ができるだろう。

押し葉の結果 
 
左オトコヨウゾメ黒色、右コバノガマズミ緑色

 *以上オトコヨウゾメ、コバノガマズミの花の様子、葉柄基部の針状の托葉、押し葉の結果等についてはこちらで取り上げています。ご興味のある方はご覧なさってくださいませ。

 さて、今回のわたしの一番の出来事はこれだった。それはブドウのようなマツブサの果実を発見したことだった。この木は昨春に北山で見つけたにもかかわらず、残念ながら雌雄異株の雄株だったことから、果実は期待できず泣いたのだった。
 ここのマツブサは雌株であり、果実は1cmほどの球形で房状にぶら下がって青黒色に熟すらしい。この花だけは、過去に利尻山、裏銀座に八ケ岳や余呉など遠方でいろいろ見ていたのだが、未見だった最後の果実が見られて大満足となった。もちろん、近場のために今後とも末永く付き合いたいものである。

     
マツブサ(マツブサ科マツブサ属)の果実    左の葉は波状の浅い鋸歯、葉柄は長い 

 なお、ウィキペェデイアによれば、「生薬としては、秋につると葉を採取して細かく刻んで天日乾燥させたものが「松藤しょうとう」とよばれ、浴湯料として用いて神経痛やリウマチに効果があるとされるようだ。また、果実は薬用、食用にされ、松脂のような匂いがあるが、酸味があって食べることもでき、特に果実酒にされる。同属のチョウセンゴミシと同様に鎮咳、強壮効果もあるといわれる。」とある。

 春一番には黄色花を咲かせて山人たちを歓喜させてくれるクロモジ属のダンコウバイにアブラチャンの果実が見られた。

         
ダンコウバイ(クスノキ科クロモジ属)の冬芽    左の果実は8mmと小さく黒紫色に熟す    アブラチャンは1.5cmと大きく黄褐色に熟す 

 この晩秋の時期に花を咲かす樹木は珍しい。それはグミだった。

         
 ナワシログミ(グミ科・属)    花は終わり果実化始まるホツツジ(ツツジ科)   サンカクヅル(ブドウ科・属) 

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