京都西山に咲く花 ’18.11.23 曇のち晴

 きのうは小説ではない、二十四節気の小雪だった。わたしがよく登る比良では、去年も一昨年も11月19日には初冠雪であったのだが、今年はようやく本日初冠雪が見られたようだ。どうりでこちらの西山山麓でも頬さす風は冷たかった。そんな中でも枯れ葉をカサコソいわせながらのトレックは実に楽しいものだった。

 もちろん、今、身も心も楽しい気分になっているその訳は、帰宅後に初冠雪が分かったからでもあるのだが、山歩き中に以下のような花や実に出会えたのが第一原因であるのだ・・。そうだ、原因はもうひとつあるのだ。それは、このページを整理中にはBGM代わりに流している「・・・あれからわたしは冬隣り、微笑むことさえ忘れそう 地球の夜更けはせつないよ・・♪」う~ん、まさに冬隣りだ、寒い!、でも、やっぱり「ちあきなおみ」のハスキーな声にしびれながらPCに向かうのも一層楽しい気分にさせてくれるのだ・・。笑

         
 ホソバオグルマ(キク科オグルマ属) 細葉小車   道ばた沿いで葉も花も痛みがちのよう    京都府のRDBでは『絶滅寸前種』 

 こちらで咲くホソバオグルマの環境は田畑周辺の農作業用車が走るために、草刈りされるのだが、今年はどうやら刈られずにすんだようで、今頃になっても残花が冷たい風に揺られていた。どうやら何かに踏まれたのか、先の台風でへし折られたのかしたらしい。超希少種なのにそばを通る人たちにはまったく無頓着な心根のようで人も自然界も痛ましい。

ガガイモとカラスウリの果実

 次の野草類の果実はガガイモとカラスウリだった。最初のガガイモはそろそろ、種髪しゅはつの様子が見られるのだろうかと本日のお目当てだったのだが、残念ながらまだまだ早かったようだ。ネットによれば11月下旬には種髪が見られそうだが、温暖化で遅くなりそうではないだろうか。11月末を忘れないようにしたい。なお、果実は紡錘形の袋果で、長さは8~10cm、幅は2~2.5cmと大きい。そして 熟すにつれて表面にはイボ状の突起が出てくる。(↓左画像表面には突起が見える。)そして、種髪とは、裂開する実の種子を飛ばすためにある毛のことを云うようだ。

 二つ目のカラスウリは花が8月ころの夜間に咲くことで知られ、朝方に花は萎んでしまうために、あのきれいな網目状のレースのような花はなかなか目にすることは容易ではなさそうだ。そのかわり果実になれば晩秋から初冬にかけて寒々とした野山で出会うことが多い。今回の場所では赤い実が計10個以上はぶらさがっていたようだ。

     
 ガガイモ(キョウチクトウ科ガガイモ属)   カラスウリ(ウリ科カラスウリ属)の目立つ果実 


 さて、山野草はこの時期だからほとんど見られないのだが、木本類は今が果実の完熟期のために話題は事欠かない。最初はヤブムラサキの果実である。仲間のムラサキシキブの実はもうほとんどが野鳥などの餌になったのだろうか。今はもう見られないのだが、今回はその仲間のヤブムラサキの実が一番の最盛期となっていた。それに位置によって異なるも、葉がほとんど落ちている個体と、まだしっかり葉が残ってそれが丁度色づき始めている個体となっていろいろな点で楽しめた。

 とりわけ、この種ははっきりした特徴があり、山歩きの中では話題に事欠かない楽しい樹種なのだ。森の中でのお遊びの提案をしよう。ただ、この遊びの時期は葉が落ちる秋より葉が生きいきしている初夏あたりがグッドだろう。

 例えば中が見えない袋の中に、先に内緒でこのヤブムラサキの葉一枚を用意したうえで、仲間と一緒に歩きだそう。このヤブムラサキの株に近づく直前で、参加者に「さぁ、皆さんこれからお遊びとしましょう!。この袋の中に入っている生きものは何んでしょうか?」と言った後に注意事項も説明しよう。「皆さんは片手だけを入れて、中のものをきつく握ってしまわないで、そろっとやわらかく触わってみよう。でもびっくりし過ぎてつかんだものを外には引っ張り出さないことがお約束ですヨ。」
 それから事前説明にもうひとつ大事なことは、あくまでも自分の子供に言うように、やさしく丁寧に説明することも必要でしょう。こうして大自然の中で遊ぶと、どなたでも童心に帰ったような気持ちになって、大の大人でも「キャッキャ」と賑やかに大盛り上がりとなること請け合いでしょう・・?。
 ただし、この「テンション上がる理由説明はこの場では止しておきましょう・・」。「みなさん、来年お友達とご一緒のハイク時に一度お試しあれ!・・」笑

 
 ヤブムラサキ(シソ科ムラサキシキブ属)

 次の種もまた面白いものであるのだが、ご存じだろうか。それはヤマコウバシといってその名前どうり枝がいい匂いがするのだ。この種はクスノキ科の一員であり、その仲間はほとんどが香りがよいことで知られる。例えばクロモジの香りは人が好むために、高級和菓子の楊枝として使われることは名高いから山歩きする人にこの話を知らない人はないくらいだろう。このようにヤマコウバシもその香りのよいクロモ属の仲間であり、枝などを折れば香ばしー匂いがすることからつけられた名前と手持ちの図鑑に表記がある。

 他にもいろいろな植物小話もあるが、このヤマコウバシの徹底的な珍しい特徴は次のとおりだろう。それは日本では雄株はないのに、雌株だけで実をつけるという、なんともミステリアスな植物であることだろう。ちなみに植物の世界でもこの点の不思議については、学者の間ですら確たる論はないらしい。どなたかその答えを研究してみて欲しいものだ・・。

 「それから皆さんこれから雪のシーズンが近づいてきたのですが、寒くなって葉が枯れてしまってもいつまで長い間枯れ葉がついた状態のままの小低木を見た記憶はないでしょうか・・?、そうです。その木がこのヤマコウバシなのです。要するに何が言いたいのかと言えば、木の名前を一番早く覚えられるのが、この枯れ葉をつけた木を見て覚えられるヤマコウバシなんですよ。」、もちろん、この種には他にも特長はまだまだあるのだがまた今度にしよう・・。笑

     
ヤマコウバシ(クスノキ科クロモジ属)    葉や冬芽のアップ 
 
 
 次のつる性のイチゴはフユイチゴである。キイチゴ属の実は初夏から初秋あたりまでに熟すが、こちらはいよいよ11月と寒くなりだせば果実が真っ赤に熟すという点で珍しいことからの名のフユイチゴである。近縁種にミヤマフユイチゴもある。この両者は花も実も同じ時期であり、かつまた混生するために見分けには注意が必要である。簡単なポイントは葉先の丸いか尖っていかの見比べが容易だろう。ミヤマフユイチゴの葉先は尖っている方だ。もちろん同定ポイントは他にもあることは当然だが・・。
 
フユイチゴ(バラ科キイチゴ属)葉先が丸っこい 

 サネカズラの果実
さて、わたし的には久しぶりのつる性常緑樹のサネカズラにも出会えた。この実をご存じの方は相当の通だろう。その名はサネカズラ(別名ビナンカズラ)だ。この種も面白い話題があり、わたしも大好きな樹種である。先週17日に山友が書いた「ボタニカルアート展」で見てきたばかりのサネカズラだ。
 なお、この仲間は三種しかないマツブサ科という小さな科だから把握は容易だろう。それはマツブサ、チョウセンゴミシとサネカズラで、それぞれがおもしろい特徴を持っているためにすぐに覚えられた。もちろん三種とも花も実も園芸品ではなく、正真正銘の山登りの中で見かけているのだ。それにもまして本日の個体は果実を数えたのだが、ちょうど10個もつけており、思わず「バンザ~イ!!」とひとり叫んでいた。今後はもちろん定点観察常緑つる性としよう。(欣喜雀躍きんきじゃくやく!) 

 
サネカズラ(マツブサ科サネカズラ属)  


 さて、最後の木本類の一つだ。それもこのヤブコウジは以前にはあちこちで見ていたのだが、近年ほとんど見なくなってしまい、出会いは久しぶりであった。それは今年の21号台風の爪痕回避で倒木を避けたための、偶然でありコナラの株元で見つけたので、これまた大喜びとなったが、さすがに斜面きつく飛び上がることはできなかった。笑

 
 ヤブコウジ(サクラソウ科ヤブコウジ属)

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