京都西山 ポンポン山で山・花納め ’18.12.25 晴のち曇

 立石橋-鉢伏林道-嫁入り道-京青ノ森-釈迦岳-ポンポン山-東海自然歩道-杉谷-北尾往生院跡地-十輪寺-西山CP-立石橋

 今年の暮れは天候が芳しくない。やむなく今回をもって本年の山歩きを納めることとなろう。ところが今回は珍しく小春日和のような一日となってくれ、今年季節を変えて楽しめた植物たちに一年の挨拶をしてみようと歩き回ってみた。

 最初はトキリマメの独特な姿の果実が見られた。当地ではトキリマメばかりが見られるも、その近縁種のタンキリマメは別地でしか見られない。その別地のタンキリマメは先日出かけたが草刈りされてしまい、葉や果実は見られずじまいであったのでその葉は9月ころに撮ったものを貼ってみたい。
 この二種は花、果実は素人目には同定はなかなか容易ではなく、その点、葉の姿での見分けは簡単なために下記の画像で見比べてほしい。

     
両方トキリマメの果実、見るからにひょうきんな姿で面白い、黒光りする実は容易に落ちず 
     
葉先が尖り、葉質が薄目なトキリマメの葉    葉先が尖らず丸っぽい葉がタンキリマメ 

 二番手はボタンヅルの果実が綿毛のように他の枝にからみついていた。この種も酷似するセンニンソウとは花や実を初心者が見ても容易に区別し難いだろう。だが、葉の違いは鋸歯のあるなしで判断しやすいが、その葉の縁に鋸歯のあるのが今回見たボタンヅルの実であった。(実はこの地のボタンヅルの花や葉は何度も見ているために分かったものである。笑)、こちらでも葉を見比べてもらいたい。
 参考までに↓二枚の8~9月ころに撮った葉で見分けてほしい。もちろん、果実の今頃には両者の葉はほとんど落ちてないため、まず見られない。そのために果実を見ただけではどちらの種かとの同定には苦しむこととなろう。

         
 ボタンヅルの果実    ボタンヅルの葉には大きな鋸歯あり   センニンソウの葉は全縁 

 三番手はジャノヒゲが瑠璃色の光沢ある実をつけて輝いていた。葉の幅は2~3mmと細くて弱弱しく見えるのが特徴である。同じような時期によく見かけるヤブランの葉は1cmほどと広く、果実には光沢があるも黒色だから見分けやすい。

さらに、今年7回目の観察となったガガイモの種髪だが、こちらはまもなく種をつけた白糸を飛ばすことになるだろう。加えて、常緑できれいな葉をつけたコクランの花殻が目についた。こうしてみると希少種のラン科でありながら、コクランは西山の方々でも咲いてくれるようで、来年は一層コクランの花巡りがさらに楽しみである。

         
 ジャノヒゲ(別名リュウノヒゲ)   常緑の多年草のコクランの花殻     ガガイモの果実は完熟まで長くかかる


 シダや苔の美しい種が目についた。種類は抜群に多い植物なために、花々と異なり容易には把握しかねるのだが、それらの中でもきれいで特徴的な種はやはり気になるものだ。

     
タチシノブ 葉柄に縦溝あり    オオカサゴケ 京都府準絶滅危惧種 

 赤い実はよく目立つがヤブコウジは近年特に減少のきざしで普段はほとんど見かけず、出会えばうれしい種となっている。ヤブコウジといえば十両とよく聞くが、万両・千両・百両・十両・一両の実達は、秋から冬に赤熟し その赤い実も艶やかで自然の中でもよく目につく。そのため古来、これらの赤い実を付けた植物は、お正月の縁起物としてお飾りに人気の品々であろう。

 さて、万両、千両はそれぞれマンリョウ、センリョウ(センリョウ科)とお正月の頃には今や知らない人はないほどの園芸種が出回り目出度い飾り物だ。では比較的その名も知らない人もあるらしい百両はカラタチバナ、十両が今回わたしが出会ったヤブコウジで、一両がアリドウシ(アカネ科)は普段からお金が有りどうしと言って特に目出度い種であるようだ。笑
 なお、種名後の()の書かれていない種はいずれも以前はヤブコウジ科だったが、近年はサクラソウ科に変更となっている。それに、アオキ(アオキ科)の果実も大ぶりの楕円形であり光沢あってよく目立つ実であるが今が最盛期のようで、いたるところに目立って見られた。

 ところで、今日もモチツツジの時忘れの花がひと花だけ咲いて見せてくれた。これは帰り花、返り花、狂い咲きなどと色々な表現で言われているが、わたしはそんな花をあえて、「時忘れの花」と呼ぶことにしている。思いがけなく一、ニ輪咲いたけなげな花に出会うと、目の前にやがて来る厳しい冬の寒さを思いやってしまうのだ。丁度今頃、初冬、小春日和りのころに時を忘れたように返り咲く花をいうのだが、とりわけ桜や山吹につつじなどは、特に山歩きの中でも多く見られる現象であろう。

         
 ヤブコウジ(十両)   アオキの鮮やかな果実     時忘れの花、モチツツジ

 シソ科のヤブムラサキにムラサキシキブの果実がまだ残って、紅葉後の山麓を染めて着飾っているようだった。紫色の美しい実が見事というばかりで拍手してやりたいほど見惚れていたのである。

 ポンポン山から西側へは能勢方面の眺めがよい。一番左の真西にポンポン山と偶然同じ標高を持つ、京都府と大阪府境の鴻応山が一番近く姿いい。これから雪がつけば右への能勢の剣尾山横尾山が、その右奥に深山、そしてさらに右には亀岡の雄である半国山あたりは冠雪時の白銀輝く眺望が素晴らしい眺めとなってお気に入りだ。そういえばこれらの頂を踏んでから相当の月日が過ぎている。もう再訪はできないのだろうかとの思いが寂しい・・。

         
 ヤブムラサキ   ムラサキシキブ     ポンポン山山頂より西の眺め


 最後は帰りに善峯寺隣の北尾往生院であった旧三鈷寺の跡地へも立ち寄ってみた。三鈷寺は「平安時代、承保元年(1074年)に源算上人が草庵を結んで北尾往生院と号したのが始まり」とある。駒札には「鎌倉時代の四祖の證空(西山国師)がこの地を念仏道場として発展させた。江戸時代中期に本堂を現在の地に移した。」とあった。

         
旧三鈷寺の跡地の北尾往生院   樹齢800年の桂の樹、さかさの杖     本堂への苔むす石段

 ホームヘ

inserted by FC2 system