京都東山 大木のエノキにキヅタ ’19.1.11 曇

 今回は残り福の祇園のえべっさんの日だったが、商売人ではない我が身には植物の方がより興味ある。寒空に身をかがめながら観光客を縫って、東山のシロバイの観察をしてこようと近場へ向かった。ところが着くや否や目の前に大木がでんと立っているのが目に飛び込んできた。「あれ~、この大樹は何だろう・・まさか樹肌からしてケヤキではないな。それにこの木につるんでるのはツルマサキかな・・?、どうかな・・?」と疑問は膨らむばかりだった。

 
 エノキ(アサ科エノキ属)に何かつるんでる・・?

 そうだ、早速カメラズームで寄って見よう。すると何とか葉の様子や果実が見られたことからつる性の樹木はキヅタ(ウコギ科キヅタ属)と判明した。そして、つるんでいる大木の落葉樹はエノキと同定完了であった。う~ん、今年の初東山の観察は大成功であった。ラッキ~ 笑

         
大きな木の下部は板根状が発達しているが     中間につるむ太い幹が上に這い登る・・      上部の拡大で見つけた実でやっ、これはキヅタ 

 では、つるまれている大木は何だ・・?、と疑問わく。つるんでいる枝葉のさらに上には葉をすべて落とした枝のみが空に伸びている。なんだ~、なんだ・・?。そうだ、ならば足元の落ち葉を探そう。見れば株元一帯に↓の葉がいっぱい広がっていた。やっ、この葉はエノキだ!。自力で二種の同定が出来た喜びが感動となった。これだから自然観察はやめられない!

 
 落ち葉は裏向きばかり、表も上にして観察しよう

 今回は大木のエノキにつるむキヅタを発見であった。実はこの地にもこれまでから何度も足を踏み入れていたのだが、この大木すら全く気になっていなかったのだ。これで一安心であった。なお、この大木の隣りの細い木(二段↑左画像)は今回のお目当てだったシロバイであることも今回分かったのだが、このシロバイも樹高が高すぎて(4~5mだろうか)、これまでは目が届いていなかった。

 キヅタと仲間たち

 キヅタ(ウコギ科キヅタ属)はハイカーの間でもあまり知られていないようだ。「タカノツメやコシアブラの仲間ですよ・・」といえば笑顔が返ってきそうだが、こちらキヅタは岩など低い他物につるんでいれば、その目の前で見ると常緑のつる性で、葉や実も地味すぎるらしく、歩く人たちにはそんなに興味を示してくれそうにないのが残念だ。
 今回、このつるの下部は太さ6cmは充分あるように見え、気根を出してどんどん他の物の上部へ這い上るのだ。花期は10~12月に咲くことからフユヅタとの別名がある。一方似通ったつる性からナツヅタといわれるのは甲子園のバックネット裏の壁やペギー葉山の歌で名高いブドウ科のツタは6~7月の開花でナツヅタとの別名がある。
 わたし的には、これだけ樹高の高いエノキにつるんだものだから空へ向かってしまうがごとく、人間たち地上者には花や果実の鑑賞などできそうにもない。その点からすれば可哀想な状態といえなくもない。笑

エノキの近縁種たち

 そもそも、植物分類として旧ニレ属やケヤキ属等はそのままニレ科として変わりないが、旧エノキ属、ムクノキ属は従来はニレ科の分類であったのが、昨今のAPG植物分類体系ではエノキ属、ムクノキ属はアサ科へと変更されている。この仲間たちはほとんど落葉高木で20m、いやそれ以上に高くなる樹種だろう。
 そのようなことから、ハイカーにはよほど植物好きでない限り興味を持ってもらえない樹木ではないだろうか。でも、エノキは相当の年配者には歴史の面から知られているのではなかろうか。それはエノキといえば古くは街道の一里塚や村や橋のたもとに植られて昨今では大木となっており、それぞれいろいろな謂れの木となっていることを先人に教えられているからだ。でも、そんな話しすら若いハイカーはほとんど知ることもないだろう。というより、そんな歴史話に興味も持たないのではないか。
 それより、昆虫の蝶類が子供の頃に好きだったことから、ハイカーの中にも以外に多いことはわたしも知っている。その蝶類の中に日本の国蝶として知られるオオムラサキを代表として、エノキ類の樹木が蝶の餌、すなわち食樹であることの面から、エノキという植物を知っているくらいだろう。

 さて、具体的なエノキの話だが、前述のように高木すぎて花や葉の観察には不適な樹木だが、それでも葉はなんとか観察の対象とすることができよう。なぜならば酷似する葉があるから面白い点だ。それは同じ近縁種のムクノキである。葉の話し中心だが、縁の鋸歯がつく葉先から1/3くらいしかないのがエノキ、ほぼ縁全体に鋸歯のあるのがムクノキと大雑把だが、これさえ覚えればフィールドでの同定はOKだろう。
 もっともエノキ属の仲間のエゾエノキ(別名カンサイエノキ)という種もあってちょいとややこしいが、こちらの鋸歯は葉身の2/3以上につくので、こうなるとムクノキを知る人には「どっちかナ・・?」となってしまう。その場合は測脈が鋸歯の先端へ達するのがムクノキ属でエノキ属は鋸歯の先端まで達しないので、エノキやエゾエノキは測脈先端まで見て同定したい。


 さて、この後は喜び勇んで本日のお目当てであるシロバイ(ハイノキ科ハイノキ属)の果実模様を見ようと前進であったのだが、こちらは果実そのものが全く皆無となっていた。やはり昨秋の21号台風の倒木の凄さはもちろんのこと、植物たちの果実や落葉樹の葉も丸裸となっていた。さすがに常緑樹のシロバイの葉はしっかりついてはいたのだが、肝心の見たかった果実の姿が0である。

 シロバイはおもしろい木だ。植物たちは普通春に花が咲いた後にその年には果実が熟すのだが、シロバイは8~10月頃と、その年の遅目に開花する。花は3cmほどの穂状花序で直径6mmの白花を咲かし、その後に球形の5~7mmほどの果実をつけてから、1年以上かけて翌年の秋ごろに紫黒色に熟すのである。したがって若い実の緑色の状態が長く見られるのだが、今回緑色の若い実はもちろん、熟している紫黒色の姿の果実ともども皆無となっていたのである。なお、秋頃の緑色の果実は14年8/31の5年前の撮影のものである。

 しかたないからシロバイは葉の表裏を撮ってきた。この葉を見ると分かるようにわたし的には、波状が特に目立っているのが特徴のように思える。手持ちの図鑑にはその説明はハイノキ科全体のページに皆無なのが不思議であるのだが・・?。というのもハイノキ科でわたしが他の見た種の中には、これだけ波状の様子が頭の隅にはないので、図鑑も調べるのだが波状はシロバイ以外には、四国で見たハイノキの葉にもやや波状の鋸歯がありそうだったが、こちらのシロバイの葉柄が2~4mmとほとんど目立たないのに比べ、ハイノキの葉柄は1cmと長いので比較可能だろう。よってシロバイの葉は波状鋸歯が特徴とわたしのお奨め同定ポイントとして覚えたい。笑

     
シロバイの葉表 縁には波状の浅い鋸歯あり      葉裏 主脈はじめ細毛、後ほとんど無毛となり 

 その他に目についた種を並べておこう。木本類

         
 イズセンリョウは伊豆半島の名     カクレミノは果実見たこと無しだが   湿地ではないがウメモドキも見た 
         
 ミヤマフユイチゴは希少、フユイチゴどこでも    ビロードイチゴの葉表、両面フサフサ     葉裏の明るい紫色が独特できれい 
         
 サネカズラ 別名ビナンカズラ        自然の中でのセンリョウ、植栽かも? 

 草本類はこの頃少ないだろう。

         
 サンショウソウ 花は2mmと極小さい    アケボノシュスラン葉は寒さに弱いか    ヒヨドリジョウゴの実も終盤か 

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