比良 ようやく今冬最初の武奈ケ岳 ’19.2.24 晴のち曇

比良駅-イン谷口-青ガレ-金糞峠-南尾根-コヤマノ岳-武奈ケ岳-コヤマノ岳東尾根
-奥の深谷出合-八雲が原-北比良峠-ダケ道-大山口-比良駅  

 天候不順の本年は比良へはなかなか足が向かなかった。でも今日はなんとか晴れるようだと武奈へ向かった。二番電車で比良駅を出発(7:20)しだすと、雲海こそないがご来光が神々しく、もう琵琶湖上に光り輝いているではないか。「よし、今日は見事な武奈ケ岳が踏めることだろう」とテンションが上がり気持ち良いスタートとなってくれた。
 しばらく歩けばヤマナラシという案外ハイカーにも知られていないだろうと勝手に思っている樹木の地にやってきた。去年の時点で予想していたとおり、関電の電線下に根付いた場所が悪かったのだ。その電力会社が容赦なく群生の樹々を善良なるハイカーの気持ちも考えずに大伐採してしまっていた。自然を大切にせよ、ケシカラン!泣、笑

 自らの勝手な思いを笑いながら、今日の歩きは晴れ渡って気持ちよく、そんな伐採のことより登山を楽しもうと気持ちの切り替えもすばやい。いつもの道の大山口を過ぎても雪のかけらも見られない。すると、あれー、先ほど駅で準備中に口を聞いた青年が「ダケ道から武奈ケ岳へ登ります。」と言っていたのに大山口を右折せずに前進するではないか、早くもルート変更か・・とその時には多くは思わなかった。それでも正面谷最初の水場あたりからようやく残雪が出だしてきた。夏には涸れやすいこちらの水場もさすがに今は元気だ。一口入れようではないか。

 そうだ、この先の「かくれ滝」にも寄っていこう。とウエ谷から元気に水を落とす滝を眺めて至福の時が得られた。もちろん、この後の金糞滝へも挨拶したいもんだが、ただ、あの取りつきは雪の状態ではやや危なっかしいので着いてから考えようと思いながら歩きだした。さすがに日曜日でハイカーは多い。若手や夫婦連れ、小グループなど出会う人たちはいろいろなスタイルが見られるが押しなべて皆さん足は速い。このあたりまでは可能な限りゆっくり歩きしようと心しているのである。

 
 登る前に出会うと元気をくれるかくれ滝

 青ガレに着いたが、肝心の金糞滝への上がり口は雪が腐っているような姿であり、悪いことに手をかける岩や木も見えない。う~ん、残念だがこれはヤバいから止めておこうと心変わりだ。すると前方上には一人が登っており、雪の消えた下側の岩にかけてアイゼンを準備している先行者がいた。

  もちろん、こちらもそこしか用意の場所はないために狭いそばだがアイゼン装着だった。先着者はなかなか準備に手間取っているようだ。水の流れの狭き岩の上のところへ、交わして先行するのは危険のようだった。その内に次の方が着いてつめた場所で準備にかかる。準備し終わって「すいません、まだ~・・?」と前の方へ声を出すと「ア~やっとできた」と腰をようやく上げて黙って歩きだしていくではないか。

 
青ガレの雪は解けて少ない 

 こちらはあきれながら、次の方へ「すいません、お先です・・」と先行した。ところが先に進むオジサンは歩くのも遅い。しかし、ここは比良の青ガレだ、岩場の急登の中でまさか追い越すわけにはいかない。5mは間をおきながら、先行者を焦らせないように極めてゆっくり登ることを心がけ登っていた。
 そしてようやく青ガレは終わってやや緩やかになったあたりには、下のかくれ滝を見て戻ってきたあたりで元気に追い越していった別の青年が休んでいた。彼はこちらが青ガレに着いて見上げた時に姿が見えていた彼だったと防寒着の黄色から分かったのだ。それにしても長い休憩をしているもんだ。こんな、分岐でもないところでスマホを覗いている。・・

 そしてすぐの二番目の水場が見えるあたりで、アイゼンに時間のかかった御仁を追い越して先に行かせてもらった。しばらく歩けば静かな急坂の中で樹木に当たったのだろう、小さな落石のカチーンと響き渡る音が聞こえてきた。お陰ですぐ見上げてもその落石の姿は目に入らなくてやれやれである。
 すると今度は数年前の豪雨時にここまで落ちてきた大岩だろう。大岩が転げ落ちて居座っている地に上がってきたが、この大岩がここへ居座ってからそんなに年数は経っていないのだ。その大岩の直下には若そうな別の人が立ち休憩をしているではないか。こちらは追い越し際すぐに「ここでの立ち休憩は危険ですよ、この大岩がもし動けばひとたまりもないでしょう。休むのは大岩より上でしないと・・」と声かけして上っていったのだ。急斜面の岩場下あたりは充分な注意が必要であろうと考えながら登ればすぐそこは金糞峠(9:40~45)だった。

 
 金糞峠 

 いつもとは違い峠は風もなくありがたい。ところがそこには比良駅で口を聞いていた青年で、「え~、まだこんなところで休んでるの、若くて足も早いのに・・?」と笑いながら声をかけると、照れくさそうに彼はすぐ降りて行きだした。そして、八雲が原方面への標識で立ち止まっているではないか。ひょっとしてと思いすぐに追うと、最初の標識地点で「武奈ケ岳へは・・」と聞くではないか。
 このセリフを聞いてやっぱり、「お~、あの時にはダケ道には誰も向かわず、みんな青ガレへ進んでおり、彼はダケ道への分岐を知らずに正面谷を上ってきてしまったんだ。」と思ったのだ。聞けば比良は初めてだという。このように、雪の武奈へ単独で初めて登るというような無謀青年と付き合ってる時間はこちらにはない。
 だが、最小限のコース説明はしておいてあげよう。ほとんど深くは聞きもしなかったが、どうりで服装はすべてまっさらな新品を身に着けていた。こちらの昭文社の地図を見せながら、「わたしはこの地図どおりの南尾根をすぐに分かれるが、そこはトレースが薄いはずだから、アンタは大勢が歩いている道を進み、大橋へ左折せずにヨキトウゲ谷へ前進したほうがいいだろう。倒木地先で右小橋を渡って南尾根を上がるのがコースを間違えないですむだろう。その右折場所はトレースがハッキリしているハズだから、よく分かるだろう。」と教えて、その場からこちらが先行した。

 武奈ケ岳最短の標識地から登りだすと二人くらいのトレースがあったが、稜線まじかで二人に追いついた。ご夫婦らしかったが顔を見ればこちらより十分長く生きておられるような気がしたがお元気なもんだ。でも、お二人ともピッケルを上手く使いながら登っておられたから、相当な山の経験者だろうと丁重に挨拶して先をいかせていただいた。

 四つ辻からは思ってたとおりガッチリとトレースもあり、もちろん、雪は硬くしまっておりアイゼンのみでどんどん登ろう。でもブナの木が出だしてくればさすがに息がきれだしてくる。倒木ブナの上にようやく三本の大木ブナ地をパチリで、もう中峠出合だと気が楽になる。そしてネット上での名がコヤマノクラウンとあるブナの大木地まで上がってきた。コヤマノ岳の標識はこの横にあるが、正式な1181mは少しばかり北へ進んだ所だろうが硬いことはいうまい。笑

         
多数の株別れだが、イヌブナでなく本ブナだ    山頂は近い大木の三本のブナ地    コヤマノクラウンの横には山名札あり 

 コヤマノ岳の埋まる標識はパスして登っていけば1181mの最標高地があり、その東側が右下に広がっていた。「お~、これがネット上で知った方達が歩かれたコヤマノ岳東尾根だな・・。」と見下ろしてみた。わたしは「実はこうしてコヤマノ岳山頂から尾根を降りられることなど全く知らなかったので見下ろしたこともなかった。でも見るからに歩き易そうな尾根のようだな、歩いてみようかな・・」とひらめいた。実は今日は武奈ケ岳から東稜を広谷へ下ると書置きして家を出ていたのだったが、このルート変更は何とかなるだろう・・と暢気なものだった。

コヤマノ岳山頂から東尾根を見下ろす  

 でも、とりあえずは武奈ケ岳へ登っておこう。と進んでみると次第に風が強くなってきた。降りてくるハイカーに「上は風の様子はどうでしたか。」と聞けば「すごい風があってメシどころではないですよ、みんなすぐに降りてきてるでしょう。」と山頂を指さすのであった。なるほど、見上げると日曜日の山頂ではなさそうな人影が少なそうに見えた。

  武奈ヶ岳をズームアップ、山頂は数えるほど

 冬道を上がりだすときつい風に思わずフードをかぶる始末で、稜線に上がれば寒さと強風に参ってしまった。三角点にタッチ(11:10)のご挨拶が済むと、写真を撮れば退散を決め込もう。今日ばかりは下山をコヤマノ岳東尾根に先ほどチェンジしたばかりだから、こちらの東稜にも用はないと一瞬見下ろすだけであった。北側の眺望もほとんど雲が厚いので潔く辞することにした。

         
 武奈ヶ岳、おお、寒いではないか      山頂から北東、右下が東稜    南のコヤマノ岳から蓬莱山

 稜線から駆け下りすると、でもやっぱり最後にもう一度武奈を拝んでおこうと振り返れば、登り時より青空の中にあったのが唯一武奈ケ岳へ登ったのだとの有難味が感じられた。

 さぁ、後は初めてのコヤマノ岳東尾根下りだ。とやや緊張気味にコヤマノ岳山頂1181m(11:25)で心新たに見下ろしていた。すると、そこへ、青ガレでアイゼンに時間を取られていた方がようやく上がってきて、東尾根を見下ろしているわたしに「エ~、ここを下るんですか・・?、どこへ降りるんでしょうか。」と聞くので、「いえ、こちらも初めてだからよく知らないんです。でも、知ってる方達が以前降りてますから大丈夫ですやろ・・。奥の深谷へ降りるようですヨ」と答えて、その御仁に見送られながら、そこをスタート(11:30)した。

 
  コヤマノ岳東尾根取りつき地

 歩きだすとほとんどなだらかであり、たまに消えてもこれはワカンだなと思える踏み跡もあったりして、間違いなく東尾根を歩いているのだとの有難味を感じながらのひとり旅であった。でも、やや急下り箇所も少しはあるにはあったが、危険度は無いに等しく尾根もそう難しい箇所はなかった。途中にはアシュウスギの大木達が多くあったのには驚きであった。そのあたりではゆっくり観察までの心の余裕は初尾根ということで持ち合わせられなかったのは残念であったのが本音であろう。

         
 アシュウスギの大木地   谷へ降りるとブルーシートのログハウスが    その下にはJR小屋らしい

 尾根の最後は奥の深谷支流に流れる沢に降ればブルーシートのかかる小さな山小屋らしきログハウスが見え、その下にはJR小屋が静かに座っていたのが目に入った。すぐ先が奥の深谷源流沿いの縦走路出合だった。わたしは今日は金糞峠から登ってきていたので、ダケ道へくだろうと八雲ケ原方向へと雪の中をうすい踏み跡をトレース泥棒しながら歩いた。そして、これなら無雪期にこのルートを登ってアシュウスギの光景を見に行くのもよかろう・・と思ってしまった。

 八雲ケ原近くとなればハイカーの姿が現われ、そうだ昼食はまだだった。ならば北比良峠へ上がって食べようと多くのハイカーと交差しながら、ケルン地から降りてきたコヤマノ岳を見上げてから大休憩(12:30~13:10)とした。

 
 北比良峠からズームで見るコヤマノ岳東尾根と武奈ヶ岳 

 食べ終わると「そうだ、金糞峠下の別れで武奈はどっち・・と聞いた青年は今頃、どのあたりを歩いているのだろうか、無時だろうか・・」と思いだし、心配気味だった。朝方比良駅を出発はこちらが先にスタートしたのだが、桜のコバあたりで追いつかれたことから、さすがに若いだけに足は速かった。それにしても金糞峠で一緒になるなんて思いもしなかったのだ。なぜ、歩くのが遅くなってしまったのだろう。それは多分に峠の後の道に不安があったのではなかろうか・・」

 こんな、山初心者の青年なのにどうして雪の武奈へ単独行を選んだのかと「もっと充分山の怖さを話すべきだったな、それにこちらはもっと本人の身になって詳しくコースを丁寧に教えてあげるべきだったナ。」と反省至極でいると、こちらの身がブルブルと寒気がしてしまい、それを期に腰をあげることとした。

 後はダケ道をのんびり下るのみとなった。それにしてもダケ道の道の整備をしていただいているのは実にありがたいと今日も感謝の気持ちで歩かせていただいた。そして比良駅(15:10~20)着だった。

 コヤマノ岳東尾根のトラック

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