西山に咲くキンラン、フデリンドウ ’20.5.5 曇のち晴

 草花を撮ってからふとその先の笹原に目を落としたその瞬間に目を疑った。それはまだまだこれから花茎を伸ばして咲きだしそうなキンランの姿であった。このキンランはかたまって咲かず単生で独りぼっちなのが特徴なのだ。ただ、鹿の食害はもちろんのこと、珍しい人気のラン科の代表であろう。人の世は欲望を抑えきれずに園芸目的の採集となってしまうことから、やはり最敵は人さまではなかろうか・・と早くも心配となってきた。

 調べると西山の植物目録にも掲載はみられないようだ。もちろん日本のRDBでは環境省カテゴリーでも絶滅危惧Ⅱ類(VU)、近畿では絶滅危惧種C、もちろん京都府カテゴリーでも絶滅危惧種と超希少種の位置づけであるのだ。ハイカーの皆さん、万が一出逢えば、手を出すことは絶対にしないでもらいたい。それは犯罪となることも知ってもらいたい!

 さらにそれでなくともラン科の植物たちは多かれ少なかれ菌類から炭素源(糖分など)や窒素源(アミノ酸など)を含め、さまざまな栄養分を菌根菌に依存していることから、安易に持ち帰って移植などしてもその命を長期に保つことはまず可能ではないといわれる。そのようなことから今咲いているその地で生きてもらうのが一番であることを花好きな方たちも知っていただき、絶対に盗掘しない!との心構えで、やさしさをもって相対してもらいたいのものだ・・。

 
キンラン(ラン科キンラン属) 京都府の絶滅危惧種  

さらに、悲しい話をしなければならないのが悔しい・・。こちらも京都府カテゴリー絶滅危惧種である5~10cmの小さな淡い紫色のフデリンドウであるのだが、ポンポン山の西山山塊より姿を消してあれから10年以上は経ちそうだが、ようやく可愛らしいその姿を見せてくれたのだ。どうやら環境の遷移によってフデリンドウの生育に適したのだろうか・・?。

 実は4/27に見つけたのだが、「これだけ西山では懐かしい花なのだから、HPにも登場させないでおこう!」と心に決めていたのだ。しかし、以下のような状況からあえてネットでさらなる注意喚起の一助としたい気持ちで掲載させてもらった。「ハイカーの皆さん、どんな花でも一緒なのですが、とりわけフデリンドウをこれ以上盗掘しようとする輩を目にされたら、勇気をもって絶滅危惧種だよ、ダメだと注意をなさってください!」せつにお願い申し上げます。

 内容はこうです。発見してからも、気になって足しげくそっと観察をしようとまず、5/2に向かった。行ってみれば、その花がほとんど見当たらない・・?、探し回ってようやく枯れ葉で隠れるような小さな個体が計5株8輪しか残っていないのだ。
 確かあの石の周りに咲いていたハズだが・・と目を向けるとごっそり10cmほど穴が残っている。結果、そのような状態がそこかしこにあるのだった。しかたない、残った株の上に木の葉を隠すように乗せて、歩く側から見えにくいようにしてみた。さぁ、今後はもう盗掘などないようにしてほしいもんだ。と気を落としながら家路に急いだのだった。

 そして今日もフデリンドウはどうかなと足を伸ばして3度目の出会いが本日5/5だった。またまた減っていた。3株5輪といよいよ真剣に探さないと分からないくらいになってしまっている。最初に見つけた時点からわずか8日間で、その数20株30輪はくだらなかったのだが今ではないに等しい・・。

 なお、わたしがこちらでフデリンドウを見ていた間には誰もその場所を通過した者はいなかった。それにしても、西山界隈のハイカーの植物に対する程度の悪さ低さに呆れてしまった。これには実に情けない、イヤ気分悪くなるばかりであった。

 実は本日も他のところで数年間一株だけで咲いてくれていたイチヤクソウが見事に盗掘されてしまっていたのも現認していた。イチヤクソウは半寄生種のために、持ち帰って移植しても枯れてしまうことも知ってほしいものだ。それが証拠に庭先でイチヤクソウを咲かせているのを見かけた方はないだろう。

 わたし自身、フデリンドウが咲いた箇所あたりの今後の行動をどのようにしようかと頭を悩ませているのだが、盗掘を防ぐなにかよい方法はないものだろうかと頭が痛い・・

 
フデリンドウ(リンドウ科リンドウ属) こちらも京都府の絶滅危惧種 

 さて、気分を変えて本来の花巡りの話しとしよう・・。ヤマナラシは4月末ころから、綿毛のついた種子を散布させる。小さな種子であるとはいえ、一ヶ月ほどで熟すことになるらしい。種子は多分フワフワと風に乗って長距離、遠隔地に飛んでいくのだろう。散布する綿毛のついた種子は小さい。小さな種子であるとはいえ、一ヶ月ほどで熟すことになるようだ。

     
 ヤマナラシの枝下に落下していた綿毛のついた種子   長い葉柄基部から綿毛がついた種子が準備中 

 

次の観察はヤマモモであった。そろそろ果実ができてきたようだ。とりわけ兎の耳のように見える赤い二本は雌しべの花柱が二つに分かれているのだ。そしてその下には丸くなった若い果実が出来てくるようだ。これがどんどん膨らんで6月になると赤黒く熟して、食べられるようになるらしい。

 *ヤマモモについてもネット情報はほとんどなく、実ができるまでの様子等の情報が極めて少なそうで、素人目にはほとんど詳細が分からないのが実態なのが残念。これから徐々にでも勉強できれば・・と思う今日この頃だ・・。泣

     
 ヤマモモ(ヤマモモ科ヤマモモ属)若い果実が出来てきた    右画像は雄花の花粉放出中のもの

 

次はオオアリドオシ(別名ニセジュズネノキ)がそろそろ開花するようだが、まだほとんどツボミだった。オオアリドオシはアリドオシと違って葉が大きく、刺が葉の半分以下の長さとなるようで、葉と棘との相対的な大きさが決め手のようであるが、アリドオシはふつうに見られるも、こちらオオアリドオシは比較的少なそうだ。

 オオアリドオシ(アカネ科アリドオシ属) 葉が大き目で棘が短し

 西山で昨年見つけたヤマツツジとモチツツジの自然交雑種であり、京都に多いことからミヤコツツジと名のあるツツジを今年は西山で見てきた。この色あいが素敵で実に見事なツツジであるのだ。でも、このツツジはこれまでは愛宕山で見ていたのだが、コロナ禍で今年は遠ざかっているのが残念である。そうだ、愛宕のオオウラジロノキがその後どうなっているのか、枯れずに元気に花を咲かせているのだろうか・・?、早く会いたいものだ。

 
 ミヤコツツジ(ツツジ科ツツジ属)
     
 モチツジ     ヤマツツジ

 さて、以前に桜シーズンが終わってから白い大き目な花を咲かせていた桜を見て、うかつにもオオシマザクラがここにもあったのかと別に花の大きさ等を計りもせずにUpしてたのだが、またまたカスミザクラだろう・・とご指摘いただいてしまった。実は本日の確認作業もお目当ての歩きだったのだ。着いて葉を見れば相違点はすぐに分かった。オオシマザクラの葉の縁にある鋸歯は先端が芒状に長く伸びるのが特徴であり、カスミザクラの鋸歯である粗く先端は鋭く尖るだけで芒状に長く尖らない。それに花柄の有毛や萼片が全縁なのも確認してカスミザクラと現認した。

     
カスミザクラのサクランボがもうできていた     葉は鋸歯の様子を見たい  

 その他に目についた草本類

         
 準絶滅危惧種のカナビキソウは終盤    ヒメハギは終焉か    ウツボグサは咲き初め 
         
 アカバナユウゲショウも咲き初め   低山地にウスベニチチコグサ大群生    棘の鋭いノアザミはツボミ 

 咲きだした木本類等

     
 カマツカが咲く    コバノガマズミも咲き初め
     
小さな花のスノキ      ウグイスカグラの若い果実 

 * 最後になりましたが、京都府では希少植物としてRDBの絶滅危惧種等に指定され、ネット上に開花地は伏せるよう指導されています。・キンラン・フデリンドウ・カナビキソウについてのお問合せには応じられませんので悪しからずです。

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